ご挨拶


一般財団法人 長野県文化振興事業団理事長 近藤 誠一

「文化芸術による日本再生のリーディング県をめざして」

一般財団法人 長野県文化振興事業団理事長

近藤 誠一

 長野県は素晴らしい自然に恵まれ、豊かな歴史と伝統を受け継いでまいりました。それらは東山魁夷画伯をはじめ、多くの芸術家に特別なインスピレーションを与えてきたことは皆様ご承知の通りです。しかしこれまでは、このような素晴らしい文化資源が必ずしも十分に活用され、県の活力の増進や、県民のしあわせに結びついた訳ではありません。

 文化芸術にはさまざまな力があります。それは個人に心の感動を表現し、他とそれを共有し、コミュニケーションを行う力を与えてくれます。またすべてのひとを社会に包摂する事で社会の連帯を深め、ひとりひとりに生き甲斐を与える力もあります。
 さらに大きな経済効果を有します。文化芸術活動への投資が有する生産誘発効果は、決して公共事業に大きく劣るものではないばかりか、人々が充実した生活を送ることを可能にするという、数字にならない効果もあります。
 加えて漫画やアニメなどの現代文化から、能や文楽のような古典文化、伝統工芸に至るまで、日本のイメージを向上する役割ももっていることが最近ますます明らかになってきました。
 しかし最も重要な役割は、われわれを固定観念や既成概念から自由にしてくれること、および古来日本人が作り上げ、伝承してきたさまざまな知恵や教えを文化財という形でいまを生きる者に与えてくれることです。

 私は、2014年1月の(一財)長野県文化振興事業団 理事長就任以来、私自身はクリエイターでないので芸術面で秀でた方にそばに来て頂き理念を現場で具現化する「芸術監督」の設置を望んできました。こうした中、長野県は2015年度を『文化振興元年』とし、その取り組みを推進し長野県の文化事業全体の底上げを図るため、2016年4月に複数の芸術分野(演劇、音楽、美術、プロデュース)からなる芸術監督団を当事業団に設置しました。

 長野県は県土が広く、県立の文化会館が3館あることや信濃美術館をはじめ博物館・美術館数が全国一であるなど、数多くの文化施設があります。
 それぞれの分野の第一線で活躍する芸術監督団の方々に一緒になって新たな企画を提案実施いただき、こうした文化施設が連携を深めながら活動することによって、県民の方々のもつ文化的潜在力が表面化し、それぞれが文化芸術を鑑賞するだけでなく、自ら創り、協働することで文化芸術が持つ力が県内に満ち溢れ、県民をしあわせにするモデル県となり、また、文化芸術による日本再生のリーディング県となるよう、長野県とともに取り組んでまいります。

プロフィール

1946年神奈川県生まれ。1971年東京大学教養学科卒、1972年外務省入省、広報文化交流部長を経て2006~2008年ユネスコ日本政府代表部特命大使。2008年9月から駐デンマーク特命全権大使。2010年7月~2013年7月文化庁長官。

現在、外務省参与、公益財団法人東京都交響楽団理事長、公益財団法人京都市芸術文化協会理事長、公益財団法人横浜市芸術文化振興財団理事長、公益財団法人美術文化振興協会会長、国際ファッション専門職大学学長、一般社団法人TAKUMI-Art du Japon 代表理事、日本和文化振興プロジェクト代表理事、人文知応援フォーラム共同代表 ほか

2006年レジオン・ドヌール・シュバリエ章(フランス)、2007年ベルナルド・オヒギンズ・大十字章(チリ)、2010年ダネブロー勲章大十字章(デンマーク)、2015年度アカデミア章(国際部門)、2016年瑞宝重光章を受章。